2012年6月27日水曜日

一人と独り




カリーマからアトバラを経てシャンディという砂漠の街に到着した。シャンディで一晩分の水と食料を調達し、タクシーに乗って向かったのは「ベジラウィヤ」と呼ばれる砂漠のピラミッド群。

「ベジラウィヤの大ピラミッド群はスーダン観光のハイライト。高いビザ代をようやく回収できた気になる」

そう書かれたsafariの情報ノートを信じ、期待を胸にタクシーに飛び乗った。





シャンディから車で約40分、北から南へと砂漠を走る一本道から1kmほどの小高い丘の上に岩石群が見えてきた。




「これがべジラウィヤ・・・!」

こういう何も無いところにいきなりとんでもない遺跡が現れてくるのは、スーダン、ほんとに素晴らしい。

意外に車通りの多い二車線の幹線道路脇に降り、40℃の乾いた空気を吸い込む。例によって観光客は誰もいない。自分を中心に360度が全て道。

テンション上がりまくって大声で歌いながらピラミッド群に向かって歩くが、ものの5分でバテた。バック(15kg)+ギター(7kg)+食料類(5kg)はモヤシっ子の僕には重すぎる。



砂丘と道路の中間くらいに建てられた家の日陰で、夕時まで休ませてもらうことにした。というか近くまで行ったら「寄ってけ寄ってけ」と呼ばれた。

水も電気もないこんな砂漠の真ん中で、ラクダ2頭とヤギや鶏、ロバを飼ってる家族が住んでいた。10歳くらいの少年がチャイを出してくれた。






こっちのピラミッドはイマイチ。

写真左奥にうっすら見えるのがレストランのあたり。
ここまで歩いた。













                                                                                                    夕時前、道路をはさんで反対側にある別のピラミッド群を見た後、3km近く砂漠を歩きレストランを発見。もう、汗だく。


開口一番コーラを注文。ちょっと氷ってるくらいキンキンに冷えたペットボトルが出てきた。最高に染みる。日本ではそんなに飲まないのに、スーダンでは聖水と崇めながら一日に5本は飲んでる。コーラは暑い国のための飲み物なんじゃないかと半ば本気で思ってしまう。


肉(ラム)と豆(フール)を頼み、隣の席に座っていたスーダン人のおじちゃん二人と雑談。

英語が上手で会話が弾む。質問されて、質問して。こういう時アメリカ留学してよかったって心から思う。







おじちゃん二人が店を出るとき「金払わなくていいから」と一言いわれた。えっ、て聞き返すと「もうお前の分も払ったから。ウェルカムトゥースーダンだ。」と、欠片も恩着せがましい態度なんて見せず、そう言い残し去っていった。

名前も知らない出会ったばかりの余所者にどうしてこんなことができるんだろう。カッコイイ。ほんと、カッコイイ。

握手し礼を言い二人を見送った後テーブルを見ると、カチカチに氷った水のペットボトルが2本置いてあった。乾ききった砂漠での冷たい水の価値、これは実際体験してみないと分からない。今までの人生で飲んだ水の中で1,2を争う位美味しい水だった。





中国が電気インフラのビジネスに着手してる
西の空が茜色に輝き始めたころ、ようやくべジラウィヤに戻ってきた。砂丘を登り間近で見ると、遠くから見るのとはまた違う印象を受ける。

ボロボロに崩れた廃墟のようなもの、比較的綺麗に保存されたもの、岩に彫られた落書きや砂の風紋。それら全てが優しい夕日に照らされていた。

そんな一列に並んだ大小様々なピラミッドを抜けると、砂丘の反対側には更にピラミッド群が広がっていた。
















圧巻。その一言に尽きる光景だった。

全てのピラミッドの入り口部分が夕日と逆方向を向いており、太陽崇拝されていたのであろう当時が偲ばれる。

全盛期のこの地はどんな様子だったんだろう。西の彼方に沈んでいく夕日を見守りながらそんな物思いに耽った。





夜は砂漠にテントを張って眠った。カイロで買ったメイドインチャイナ1000円の安物テントだけど、俄然「旅」っぽい。

が。

日中暖められた砂の熱は抜けきっておらず、テントの中はサウナ状態。かといって蛇やサソリが出るらしい外で寝る勇気もない。

仕方なく眠たくなるまで外で星を眺めながら涼むことにした。



街灯など一切ないべジラウィヤの星空は信じられないほど綺麗だった。しかもこの日は新月。天の川がはっきり見える。空の真ん中から地平線まで夜空を走る流れ星、どれが星座かも分からないほどの数の星、宇宙を感じる生き物のような空。こんな夜空を眺められる場所が日本にいくつあるだろう。




そんな心地よい気分もつかの間、明け方まだ暗い頃に突然テントが揺さぶられて目が覚めた。「強盗か...?」一瞬血の気が引くのを感じたが、すぐに強風にテントが煽られているのだと気づく。

天井の小窓から砂が入ってくるし、体でテントを支えても吹き飛ばされそうなくらいの強風。結局一睡もできなかった。野宿マスターへの道は想像以上に険しいようだ。

朝起きたらペグが抜けかけてた、びっくり



早朝6時頃からピラミッドの向こうの空が赤く染まり始めた。いい具合に雲が出ている。幻想的、神秘的。壮大、荘厳。いくらただの言葉を並べ立てたところで、この感動を伝えるのは難しい。

朝焼けのべジラウィヤ。完全なる静寂を独り占め。贅沢の極み。ビザ代回収どころか、もう$100払ってもいいとすら思った。間違いなくスーダンNo.1の遺跡だ。












日本を飛び出し、早三ヶ月が経った。

モロッコ、エジプト、スーダン、どこの町でも、移動のときでさえ、他の旅人との出会いがあった。ひとりぼっちだった期間は本当に数え切れるくらい。

カリーマでリョウヘイさんとカスミさんと別れて、今回は久方ぶりの完全ひとり状態だったわけだが、ずっと人と一緒だと、時折「ひとりになりたいなあ」なんて思う瞬間がある。

そんな頃合だったこともあり、始め単純にひとりを楽しんでいたが、ふと、自分は「一人」であって「独り」じゃないことに気づいた。

ハルツームで再開を約束したリョウヘイさんとカスミさんだけじゃなく、ここまでの旅路で出会ってきた沢山の人々、日本でたまに飲み会とかで僕の名前出して「あいつ今頃何してんだろうな」なんて笑ってるだろう友達、高校同期で今世界一周してる親友、大学の先生、最大の理解者である両親...

そういう多くの人の見えない支えがあるんだな、って、素直に感じた。



一人がいいと思えるのは、本当は一人じゃないときだけ(『狼と香辛料』14巻より)


ほんと、その通りだと思う。一人を楽しめることの尊さ。噛み締めなきゃいけないなあ。








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なんだかんだでまだカルツームにいますw
明日の朝、エチオピアに向けて発つ予定です、今度こそ。
エチオピア、悪い噂も度々聞くんで、気ひきしめて再出発します!

8 件のコメント:

  1. うわー、写真もあなたのひとつひとつの言葉も全部素敵ですわー。

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  2. べジラウィヤの星空、すげぇーー!
    写真でも背中がゾクッとするほど綺麗だ。
    アップに感謝。

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    1. ほんとすごかったです、星座がわからないレベル。

      こちらこそいつもコメントどうもです!

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  3. 本日、博多の学会でスーダンでNPOロシナンデスを主催して医療支援をやっている先生の話を聞きました。地域医療や医療支援ひいては、医療というものは、どれだけ、土地の人々のなかに入ってゆけるかということと話してました。本当にそうだと思います。井口くんはそういう意味で、非常に重要な修行をしてますね。
    スーダン南部は危険と聞きましたが、大丈夫でしょうか?南部を避けてエチオピアに抜けてくれれば幸いです!

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    1. 川原先生学会で帰国されてたんですね、連絡とらせて頂いててスーダンでお会いする予定だったんですが、ちょうど入れ違いになっちゃいました。残念。そして羨ましいです。。。

      「土地の人々の中に入っていくこと」、簡単なようで本当に難しいです。言葉の壁だけじゃなく文化の壁の大きさも実感する毎日です。

      南部は行かずエチオピアに入国しました。マラリア危険区域に入ったので用心します。いつも応援どうもです。

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  4. 星空の写真すてきです!
    こんなきれいな星空見れるなんて、うらやましいです(>_<)

    強盗じゃなくてよかったですね(;_;)


    今後もブログ更新楽しみにしてます(^-^)

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    1. ありがとうございます~ほんとに最高の星空でした。

      強盗にテントで襲われて~みたいな話はちょいちょい聞くんでこれからも気をつけますっ。

      どうもです^^

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