2013年10月30日水曜日

メキシコへ





高校時代、AFSという留学斡旋団体のプログラムに参加し、1年間アメリカに留学した。派遣地域はテキサス州・ダラス市。かのケネディ大統領が暗殺された、カウボーイの地である。

「アメリカ留学」と聞くと、白人と黒人の世界で、週末はホームパーティーでビリヤードに興じて、巨大なハンバーガーを週3で味わって...、といったような偏見たっぷりの生活を想像していたが、僕の場合は随分と勝手が違った。

まず、通った地元の公立高校は生徒の70%がヒスパニックだった。朝から熱烈な抱擁とキスを交わすカップルが廊下に氾濫するなんていうラテン臭が漂い、英語とスペイン語のネイティブであることは半ば常識で、配布物には英語版とスペイン語版の二種類があった。ちなみにホストファミリーはベジタリアンだった。

そんな環境にいたからだろうか、メキシコという国には長いこと興味を持っていた。何より、本場の「タコス」を一度食べてみたいと強く思い続けていた。


そしてマラウイでのこと。僕は南アフリカに到達した後の旅の進路で悩んでいた。

出国前から予想していた通り、アフリカを「一周」するには時間も金も足りないのは案の定明らかだった。かといってここまで来て日本に直帰するのはなんだか勿体ない。ならば商業船に頼み込んでインドにでも向かってヨガでも極めようか、と半ば本気で考えていた。

そんな頃合いである。とある旅人からトンでもない話を聞いた。

20121221日、メキシコ・グラテマラにかけて点在するマヤ文明の遺跡。マヤの暦が終わる瞬間、そこにいる人は異次元の世界に飛べるらしいよ。

さらに彼は続けた。

「レインボーファミリーっていう世界的ヒッピー集団がいるんだけど、彼らがメキシコのパレンケのジャングルで盛大な集会を開くんだって。」

マヤ暦の週末や人類滅亡説は、映画化されている程であるからその存在自体は知っていた。「信じているか?」と問われれば、そんな突拍子ない話を見聞きしワクワクしている自分がいるくらいであるから、答えは「ノー」だ。そもそも信じていれば日本に帰ることは考えないだろう(映画「2012」のラストでアフリカ大陸の一部だけが生き残ってたから)。ただ、僕はそんなオカルト的な話は割に好きで、それは旅を共にしていたミハラとオギノの2人も同じようだった。



ここで少し考えてみて欲しい。

「その日」に「メキシコ」に行けば「異次元に飛べる」上に、世界中の「ヒッピー」たちが「ジャングルの奥地」で「集会」を開くと言うのだ。

これはもう、形而上学的にスケールがデカい話である。地球が滅亡するなんていう非科学的な話を信じて世界から人が集う。それだけでも十分信じられないのに、「異次元」に飛べるとまで言うのだ。デカ過ぎて最早意味不明である。

信じられるだろうか?そんなバカな話あるわけがないと思うだろうか?

当然、サルモネラやマラリアで高熱を出したとは言え、僕の脳ミソもそこまでイカれた訳ではない。「んなアホな」と思った。当然である。

だが、同時に、「これしかない!」という思いがフツフツと込み上げて来た。こんなに意味の分からないアツいイベント、行かないのは損だ。こいつは「一生に一度」なんていうぬるいレベルの出来事ではなく、「この時代に生まれられてラッキー」というやつだ。


かくして我々3人は一同、南アフリカからメキシコへ向かう航空券を購入した。これほどアバウトなフィーリングで目的地を変更したことはかつて無かったし、なにより憧れのメキシコ訪問がこんな形で突如訪れたことに、僕はなんだかヒッピー的なお告げのようなものをちゃっかり感じていた。

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