2012年11月21日水曜日

マラウィ編突入 湖畔の町ヌカタベイ


タンザン鉄道がムベヤに到着したのが午後3時。予定では一泊して翌朝マラウィ国境に向けて出発するつもりであったが、運良くバスが見つかったので早速移動を開始した。自分の荷物(15Kgくらい)を全て膝の上に置かれ、足の位置は固定され、補助席込みで4人しか座れないところに5人+子供1人詰め込まれ、そんな中々に過酷なミニバスの中から見えた山間に沈む夕日は一段綺麗だった。

その後、バスを一本乗り継ぎ、下車した場所から国境までの3kmの道のりをヒーヒー言いながら歩き、既に閉じてしまっていた国境の門を懇願し開けてもらい、パスポートにスタンプをもらって7カ国目の国境を跨いだ頃にはもうすっかり辺りは真っ暗だった。もうバスもないしさてどうしたものか、などと思案していると、親切なオッサンが格安でムズズという街まで送ってくれると言う。

ムズズまでの4時間の道中、助手席に座りこのオッサンとずっと話していたのだが、これがまた本当にイイ人で、経済や政治からこの国が抱える闇の話まで、会話は絶えなかった。「マラウィでこの先嫌なことがあってもこのオッサンに免じて甘んじて潔く受け入れよう」そう思った。ムズズからはタクシーで目的地であるマラウィ湖畔の町・ヌカタベイへと向かった。到着したのは深夜12時。鉄道を含めると実にまる二日かかった長距離移動であった。夜のマラウィ湖に反射する月の光が綺麗だった。


マラウィは南北700kmくらいに伸びる細長い小国で、その国土の多くをマラウィ湖が占めている。これが海かと見紛うくらいデカくて、湖から朝日が昇ってくるのを眺めるなんて経験は初めてだった。


ヌカタベイは東を湖の入り江、西を小高い山に囲まれたのどかな田舎町。屋台や露店が連なる湖畔の商店街の規模は歩きまわるのに丁度良いサイズで、煮干のような魚がそこら中で並べられていた。中心街から湖沿いを北へと歩くと、ポツポツ、と小さな漁村が点在している。鶏やら豚やらの家畜がダルそうに歩き回り、アフリカンママたちが炎天下で煮干の干し作業に精を出している。ギターを持って歩いていると子供たちが一瞬で集まってきた。ギターを触りに近くまで来る積極的な子もいれば、木の物陰から様子を伺う照れ屋さんもいた。山の斜面には赤土のレンガで造られた小さな家々が並び、家族たちが縁側で昼下がりを楽しんでいる風景を見ていると心が安らぐものだった。



マラウィは「warm heart of Africa(アフリカの良心)」と俗称されることもあるだけに、人が良い。実際、「チャイナチャイナ!」などといきなりからかわれる回数も随分と減った。しかも英領だっただけに、英会話が初等教育から取り入れられているため、まるで不便なく英語が通じる。さらに物価は隣国タンザニアやザンビアに比べると驚くほど安く、宿代を含めて一日500円以下で生活できる程だった。


物価が安く、人が良く、英語も通じ、湖が綺麗で、雰囲気良い田舎、とくれば居心地が悪いはずはなく、当然のように計1週間ほどヌカタベイには滞在してしまった。半年ぶりのダイビング(しかも淡水)を楽しんだり、「バタフィッシュ」と呼ばれる淡水魚とは思えない美味さの魚の塩焼きに舌鼓を打ったり、「SHAKESHAKE」なる酸っぱいゲロ味がするローカルビールを試してみたり、なんだかんだで時間はあっという間に過ぎていった。



そんなヌカタベイ生活のある日のことである。

近所の診療所でマラリアの血液検査が無料でしてもらえる、という情報を聞きつけた僕と三原とオギノは、最近蚊に刺されることも多かったし、ということで早速行ってることにした。

道中「マラリアだったらどうしよう…怖ぇ…」などと柄にもなくビビる友人たちを横目に、「全く体調悪くないのにかかってるはずねえだろチキン共め!」などとまるで心配もせずに、むしろ付き添いのような気持ちで診療所へと向かった。

ドクターに事情を話し早速検査をお願いした。マラリアのチェックテストは極めて簡単な仕組みになっており、体温計のような形をしたテストキットに一滴血と専用薬を垂らすだけ、といったものだ。検査自体も10分程度で終わる。

僕、オギノ、三原の順に指先から血液を垂らしていく。奥のテーブルでドクターが全て確認作業をやってくれているので座って待っていると、「予防薬は飲んでいたのか?」やら「どこかで蚊に刺されたか?」などと僕だけ質問をされる。テスト中の検査キットの様子をチラっと伺うと、素人目に見ても僕のソレだけがどう考えても何らかの異常を呈している。

「君、マラリアかかってるね。予防薬ちゃんと飲まなきゃダメだよ?」

10分後、そんなドクターの有難いお言葉と無料で処方してくれた紙の切れ端に包まれた薬をポケットに、僕らは診療所を後にした。近所の売店で「まあドンマイ」とオギが奢ってくれたコーラは、なんだか切ない味がした。

タンザニア・ダルエスサラームのYWCA、あそこでマラリアをもらってきたに違いない。発症前だったことも考えると間違いないだろう。早期発見できたことは本当に幸いだった。

僕の持論『モスキート・エフェクト』には少々加筆する必要があるようだ。

「蚊に刺されまくると取得不可能と思われた電車のチケットが購入できる。が、そのあとマラリアにかかる。」

よし、これでよい。

1 件のコメント:

  1. おいおい大丈夫かよ(^_^;)

    でもさすがに検査うけてみよう…っていう
    判断とタイミングは医学生ですね。

    この先も気をつけて。

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