2012年8月23日木曜日

旅の危険について思うこと。


つい先日海外で起こった痛ましい事件を耳にした。ルーマニアへインターンで赴いた、僕と歳もさほど変わらぬ女子大生が強姦され殺害された、という。これから始まる生活に心震わせていた矢先の出来事、彼女の気持ちを想像すると本当にいたたまれない。現在進行形の旅人の間でも話題になっている事件だ。ネットで検索すると、女子大生のインターンを斡旋していた「アイセック」という学生運営の団体の批判やら、深夜に見知らぬ土地でタクシーに乗った彼女の軽率さの批判等で溢れている。

海外で(というか日本でも)見知らぬ土地に深夜・早朝に着くのは避ける、止むを得ない場合はそのまま空港で夜を明かす、旅人にとってこれは基本事項だが、やむを得ない状況であったら僕だってタクシーに飛び乗っていたかもしれない。そういう意味でも、本当に人事じゃあない。

この事件をキッカケに、また、「海外=危険」「女一人旅=スイーツ」なんて流れが起こってるように感じるので、一人旅肯定派の一員として、個人的に思うところをちょこっと述べてみようと思う。



今回の事件で「エグいな」って思ったのは、事件直後、彼女のtwitterやらfacebookが2chで瞬時に公開されて広まっていたこと。一般的にルーマニアよりはるかに治安が悪いとされるアフリカ、もし今回の旅中に僕が死んだら「危険ってわかっててアフリカとかマジキチwww」と書かれるであろうことは想像に難くない。けどまあ実際にその通りだと思うし、そんな国々、土地土地を周るからこそ余計に気をつけている部分は多い。

出国前にブログで「旅の危険」について書いたことがある。


 旅には常にリスクがつきまとう。


もちろん何処へ行きどんな旅をするかにもよって危険度はかなり上下するが、言語も文化も宗教も違う国を訪れる旅が、住み慣れた日本で暮らすことよりリスキーなのは当然だろう。
 だが「危険」と一口に言っても様々な危険がある。病気であったり、テロや紛争、事故や軽犯罪から重犯罪までの事件・・・特にいわゆる「発展途上国」を訪問する際、これらの危険は日本でのそれらと比べればはるかに身近なものである。
 大別すると、これらの危険には

①避けられない危険
②避けられる危険

の2種類があると僕は思っている。

 ①は例えば予測できないテロや事故などが挙げられる。
 「自分の身は自分で守る」自己防衛は旅において鉄則。だが時には万全を期したとしても全く予想できなかった事態だって起こり得る。こう言ってしまえばそれまでだが、①の危険はどうにもできないと思う。神のみぞ知る、だ。
 だが、①の起こる確立は僕が思うに非常に低い。大抵の危険は事前に何らかの対策を講じられる。それが②の「避けられる危険」だ。

 危ない所には行かない、ギリギリのラインをきちんと見極める、事前に情報を収集する。こういったことで未然に防げる危険は多いはずだ。キーワードは「情報」。旅人同士が情報交換できるノートを置いている安宿は多いし、それこそインターネットなどのウェブ上で情報を得られる時代である。中世ヨーッパの商人が街々で情報を仕入れ市場を渡り歩いてきたように、アンテナを広げることで回避できる危険は多い。事実、自身のこれまでの旅を振り返っても、起こったトラブルの大半(というか全て)は情報不足によるものだったように思う。

 もちろん全ての情報を事前に入手し危険を予測することは難しい。知らない土地でならなおさら、だ。つまるところ、重要なのはリスクとリターンを秤にかけることだろう。それが無視できる、あるいはその場で対処しきれるレベルのリスクなのか、自分の能力や経験値などを謙虚に見積もること。様々な「旅スキル」があるが、旅の蔵人と初心者の最たる違いはここではないだろうか。


(全文はココから)



「旅をする」という前提においての「回避できる危険」と「回避できない危険」、この主張は日本を出て5ヶ月経った今でも変わっていない。

ただ、今回付け足したいのは、「危険回避を講じたこと」=「危険に遭遇しない」の方程式は必ずしも成り立たない、ということだ。「旅」という行為が幾ばくかの危険性を内包するものである以上、その事実を頭と心の片隅に留めておくべきだと思う。




少し脱線するが、ひとつエピソードを紹介させて欲しい。

モロッコで出会ったとある旅人さん、彼は数年前、日本の実家で連続通り魔に刺され危うく死にかけた、という驚くべき過去を持っていた。街灯の少ない路地で夜中に、とかではない。真昼間に団地にある実家で、である。当時はニュースにもなって騒がれていたそうで、「無事だったから今はイイ笑い話だよ」と彼は語っていた(と同時に日本のメディアの報道は信用できない、という話もされていたが、今回は省略します)。

「海外=危険」、国や地域によっては事件遭遇率が日本より断然高い場所が多いといえど、一概にはそうとは言えないのではないか。スーダンの田舎と日本とで交通事故に合う確立は日本の方が間違いなく高い。日本にいたって起こる時は起こる。結局、言ってしまえば「運」なんだろうなと無責任ながら思う。ちなみにその彼は、そこまでの旅路でけっこう危ないことやらかしてるのに、危険には一度も見舞われてなかった、という。なんだか皮肉な話である。笑




「危険回避を講じる」ならば「危険に遭遇しない」は100%成り立つわけではない

繰り返しになるが、これから旅に出る、出たいと思ってる人はこの事を心に留めて欲しい。もちろん自分も含めて、だ。「まさか自分の身に起こるなんて思わない」、多くの旅人は少なからずそう思ってる部分があると思う。実際に僕自身にもそれは当てはまるし。それほど海外を旅する日本人は多いのだ。

最悪のケース、即ち「死の覚悟」をしろ、とは言わない(というかマジで死ぬ覚悟なんてできるの?)が、その可能性を意識する必要はあるだろう。それが異郷の地での適度な緊張感に繋がるのだから。

帰る場所があるから、「ただいま」を言える人がいるから、旅は旅なんだと思う。皆さん、必ず生きて帰りましょう。

最後に、今回の事件の女子大生のご冥福をお祈りします。

2 件のコメント:

  1. 「まさか自分の身に起こるなんて思わない」…旅の危険だけではなくて、生きていると多くの場面でこれはあてはあまるね。わたしも再確認しました。
    ご冥福を心からお祈りします。

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  2. そういえば、そろっと誕生日じゃね?
    たぶん当日は忙しくて忘れてるから今いっとく。
    「誕生日おめでとう!」

    返信削除

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