2011年12月22日木曜日

ダイヤモンドダスト。

冬眠したくなるほど寒い日々が続く秋田県。

鈍色の曇り空の下、毎朝転ばないように足下を直視しながら、半分すり足でマヌケなペンギンのように登校していると、ふと思い出す出来事がある。







あれは確か高2の冬のよく晴れた寒い朝。田んぼの真ん中に取り残されたような地元・西川は、いつも吹いてる電車が2時間止まるような風のない、すごく乾燥した、心地よい朝だった。

夜のうちにカチカチに凍ったよく滑る雪道は、太陽の光をいやがらせのように反射しまくっていて、細めた目を足下に向けながら僕はゆっくり駅へ向かった。

最寄りのコンビニは自転車で15分という、地元の田舎丸出し無人駅に着いて顔をあげたとき、空から何か降り出したことに気づいた。

最初雪かと思ったソレは、金色にキラキラ輝きながら秒速5cmくらいのスピードで静かに舞っていた。

初めて見たその空から降るラメラメは、手で掴んでも消えてしまい、その光景はナルニアにでも迷い込んだかと思うほど不思議で、通い慣れた筈の駅が本当に別世界のようだった。

駅で電車を待っていた他の学生達の「なにこれーキレイー」なんて歓声をどこか遠くに聞きながら、僕はその静かで、無神論者の僕にさえどこか神性なものを感じさせるようなワンシーンに魅入っていた。

その日の夜、興奮混じりに両親にその不思議体験を自慢しながら、文明の利器でその現象名を調べてみたところ、どうやら「ダイヤモンドダスト」という自然現象に似ていることがわかった。


『ダイヤモンドダスト。氷点下の空気中の氷晶で日光が反射し、空気中が光り輝くように見える大気現象。』


あの朝は寒いといっても氷点下ではなかったので、おそらくよく似た違う現象だろう。が、当時の僕はそれが「ダイヤモンドダスト」なんていうファンシーな名前を持った偶然の産物だと信じ込み、まるで宝くじで30万円当てたような気分でいた。

大学入学前、秋田大学医学部OBの作家医師「南木佳士」が芥川賞を受賞した作品名が、その「ダイヤモンドダスト」だったことを知り、また何か安っちい運命を感じた。

それからの数年、後にも先にも「ダイヤモンドダスト」に出会ったのはあの日だけだった。

今でも寒い朝は、何かそんなちょっとした奇跡を探してしまう。



















オチも何もない、ただの回想日記。

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