2013年3月21日木曜日

リゾートバイトをやってみた。



僕のFacebooktwitterをご覧の方はご存知の通り、1月29日〜3月18日の間、山形県蔵王にて住み込みバイトをしてきた。所謂「リゾートバイト」である。今回はこの2ヶ月弱の労働経験を通して感じた事・考えた事なんかを文字に起こしてみようと思う。契約規則の関係で詳細には記せないが、これからリゾートバイトを考えている人の参考になれば幸いだ。

蔵王の空


リゾートバイトって?
リゾートバイトとは、読んで字の如く国内各地のリゾート地に一定期間住み込みながら行うアルバイトである。シーズンにもよるが、募集をかけている土地や職種は様々で、集まる人も学生からフリーターまで様々だ。



申し込んだ動機
当初の予定より帰国を早めた段階から、帰国後に何をするかは考え始めていた。最有力だった国内を2ヶ月かけて点々とするプランは、妹の大学進学もあって、これ以上家族に借金できない状況になってしまい、頓挫。金が無いのであれば仕方ない、働こう。そんなノリで見つけたのが『リゾバ.comのホームページだった。

サイトを開いて頂ければ分かるように、なんだかこのリゾバというのは非常にキラキラしている。(秋田基準で)時給も悪くない職場が多い上に、食費無料、寮費無料、交通費支給、終いには「出会い多!」なんていう甘〜い文面の検索キーワードがある程だ。

「こんなウマい話がある訳がない!どこかに罠があるに違いない!」

有望かつ薔薇色の未来が待ち受けているであろう心清き学生をこんなセコい謳い文句で騙そうとはなんとも卑劣千万!などと僕も最初は思っていた。が、あったのである。こんなウマい話が(別に僕はリゾバの回し者ではない)。

決定的だったのはメキシコで出会ったある旅人の話だ。彼は大学卒後に数ヶ月間九州で働いた経験があり、その時利用したのがこの「リゾバ」だったそうだ。仕事は大変さ極まるものであったらしいが、資金もかなり稼げた上に、気になる「出会い」にも恵まれまくったと言う。それを聞いた瞬間、僕は決めた。「リゾバ、やろう」と。



仕事に関して

1.  登録からの流れ
まず、ホームページ下の電話番号にダイヤルする(サイト上では様々なリゾート施設での働き手を募集しているが、派遣会社を1度通さなければならない)。

僕の場合は地元新潟に会社の支部がなかったため、電話・郵便での契約をお願いした。書類を送ってもらい、返信し、電話で動機や希望の職場を聞かれる、といった具合にコトは進む。この時しっかりと「どこの県」の「どんな職種」に就きたいかの要望はきちんと伝えるべきだろう。それによって、先方からPDFデータで何件か候補地の情報が送られてくるので、その中から幾つか気に入ったものをピックアップする。

が、すぐに採用!となる訳ではない。会社が職場に確認して再連絡がくるまで日数が多少かかるのだ。僕の場合、2件キャンセルからの3件目での決定だったので、当初の予定より1週間程度遅れが出た(この間に秋田へ戻りアパートを契約できたので、まあ結果オーライ)。担当の派遣会社の方はとても良い方で、気さくに質問や相談に応じてくれた。もっとドロドロした世界を想像していただけに、この点は意外であった。


2.  場所
樹氷で有名なスキーリゾートである蔵王の温泉ホテルが僕の職場だった。「温泉に入れる」「新潟から近い」の2つを重視しての選択である。旅中に湯に浸かるなんてことはほぼ無かったので、飽きるほど温泉に入ってやろう、という安易かつ旅人なら誰もが夢見るであろう目論みだ。前2件は「出会い多(=募集人数が多くて指定年齢層が低)」で応募していたのだが、ばっさばっさと断られてしまった。空きを待つ時間が勿体なかったため、そんな経緯で募集1名のこのホテルに僕は応募したのであった。

蔵王は山形駅からバスで1時間ほどの山上に位置する、スキー客で適度に賑わう温泉リゾートだ。下車した瞬間に、何とも言えない硫黄の匂いが鼻を突く。深く積もった雪の底をほっそり走る川からは湯気が上がり、温泉街なる通りはなかなか良い雰囲気を醸している。コンビニこそ1件しかないが、観光客向けの食事処が軒を連ねており、最低限の生活には困らない土地だった。

勤務先であるホテルには小さいながらも立派な温泉があった。ホテルとしての規模は大きくも小さくもなく、やや古びた建物が裏手に広がる杉林に溶けるようにして控え目に聳えていた。


3.  内容
仕事は主にレストランのホール業を担当した。朝はバイキングの用意、そして風呂掃除。夜は夕食の準備と接客、そして時折人出不足のキッチンを手伝う、といった具合だ。過去にインドカレー屋のキッチンでしか働いたことのない僕にとって、ホールでの接客や和食の配膳支度はなかなかに新鮮だった(それも最初の1週間までではあったが)。


4. 
寮は職場から徒歩3分の社員寮の一室をお借りすることになった。場合によってはホテルの一室を貸し当ててもらえることもあるようだ(実に羨ましい)。

寮は別ホテルに勤める方とのシェアハウス形式で、6畳のホコリっぽい和室を割り当てられた。ガスも風呂もないが、TVと布団とストーブ(灯油は無料支給)は置いてあり、アフリカの安宿に比べれば格段に快適ではあった。しかしながら冬の蔵王は新潟・秋田など足下にも及ばぬほどに冷え込む日が多く、コタツ(ある日押し入れに閉まってあるのを発見)を見つけるまでは凍えながら「忍耐だ」と独語する日々を過ごした。


5.  食事
僕の職場では3食が無料提供された。といってもバイキングの余り物なのだが、これが最高に美味かった。時折お客の残した肉を冷蔵庫に忍ばせておき、しゃぶしゃぶを楽しんだ。美味しかった。


6.  勤務時間
忙しさによりけりだが、基本的に朝6時半〜10時半、夜4時〜8時半という実働8時間半中抜けシフトだった。要項を見る限りではどこのホテルもシフトは似たようなもののようだ。

勤務先のホールでは人数が決定的に足りておらず、2月のピーク時など1週間以上連続勤務もザラだったが、基本的に週1は少なくとも半休があった。ちなみに、給与明細を見ると「時間外手当」や「休日出勤手当」なるものが振り込まれているようで、そのへんはシッカリと管理されているようである。


7.  メリット
食と住が無料なのは間違いなくメリットだ。金を使う暇も場所もない蔵王では、オモシロい程に貯金がどんどんと溜まった。特に僕の場合、周りに同世代が1人もおらず、一緒に遊んだり〜といった雑費がなかったのも大きい。また、ブログを書いたり執筆したり勉強したりといった自分の時間を一定して持つ事ができたのも良かった。断じて負け惜しみではない。

シンプルに資金を貯めたい人は、募集人数の少ない場所を敢えて狙うのもアリだろう。


8.  デメリット
僕の場合、デメリットは職場の人間関係であった。こればかりは事前に分かり得ないので仕方の無いことではあるが(多少の注意勧告はあった)、話し相手のいない土地でストレスをぶつける相手もなく、人出不足のためそんな気の合わない同僚と四六時中顔を突き合わせねばならなかった。そんな環境下で仕事を続けていると、怒髪が天を突きかねないことも度々であった。


9.  こんな人にオススメ
とはいえ、リゾートバイト、シーズンにもよるがまとまった金額を稼げるのは事実だ。僕のように短期間のヘルプのような形でも場所によっては採ってもらえるので、「ある程度時間がとれる」かつ「まとまった資金が必要」かつ「出費を押さえたい」かつ「実家に依存できない(もしくはそれが嫌)」という人には、一考に値する選択だろう。

例えば昨今人気の「学生休学→世界一周」だって、資金が足りなければ数ヶ月リゾバをしてから旅立つのは、大いにアリ、だと思う。



感想

まず、これまた僕のtwitterfacebookをご覧の方はご存知の通り、この2ヶ月弱は楽しいことばかりではなかった。というかむしろ辛いことの方が多かった。とある社員の方と人間的に合わず、正直何度辞めようと思ったか数えきれない。結果契約期間を満了できたのは、「コイツに負けて逃げたと思われるのは更なる屈辱」というなんともガキクサいプライドのおかげだったように思う。

配膳や食器類の向き・置き方のルールは、当初こそ新鮮でオモシロくも思えたが、「こっちの方が絶対効率いいのに」と思うようなことがあっても上の決定に従わなければならず、ミス(僕が原因だろうとそうじゃなかろうと)の度にバカやらアホやら罵られ、時には突き飛ばされた。イライラしすぎて1度本気で喧嘩したこともあった程だ。

僕個人の、たかだか2ヶ月弱の、所詮バイトであるこの労働体験を過度に一般化して「社会」を知った風なクチを聞くほど、僕も奢った人間ではない。が、それに通ずる「何か」というのはこの職場にもあったように思う。

将来進むであろう医師という道と全く関係のないそんな環境で朝から晩まで淡々と仕事に勤しんだという事実と経験は、それなりに有意義であったように今は感じている。少なくとも、職場選びにおいて「人間関係」もシッカリと熟慮すべきチェック項目なんだと身を以て学べたのは良かった。



「食」に関しても多いに考えさせられた。基本的にバイキングが朝も夜も並ぶため、バカみたいな量をテーブルに持ち帰り、これまたバカみたいに盛大な残し方をするお客が少なからずいた。その分の金は払っているのだから非難すべきことではないのかもしれない。けれど、これには違和感を覚えずにいられなかった。

別に「アフリカではお腹をすかせた子供達が・・・」とか「農家の人の気持ちが・・・」なんて言い出す気はない。それとこれとでは話が違う。僕が思うのは、もっとサービスに対する「歩み寄り」があってもいいんじゃないか、ってコトだ。

支払った金額相応のサービスを期待する、資本主義に塗れた昨今これは当たり前のことなのだが、その時に「あまりにも」な態度をとるのは、見ていてもされて愉快なものじゃない。礼に尽くせなどとは言わない。ただ、「ありがとうございます、ごゆっくりどうぞー!」に笑顔1つ返すくらいの気配りは出来た方が良いのではないかな、と思った。これは自戒を含む。


蔵王温泉街



最後に、今回一番の発見は、黙々と淡々と無心で働き続けるというそれ自体は想像以上にチョロかった、ということだ。金を稼ぎ生きてゆくことは多くを望まなければ思っていたほど大変なものではないと知った。が同時に、そんな日々を送る中で「生きている心地」はしなかった。

仕事には「やりがい」を求めろと言う。その是非はさて置き、これはなかなかに漠然とし過ぎている。単純に「楽しさ・快楽」と同義であると言い切るのは少し違う気がするし、「貢献度」などという立派かつ体の良い言葉だけが結びつくものでもないだろう。

正直に言えば、この2ヶ月で僕個人はこの仕事に「やりがい」を欠片も感じなかった。何が足りていないのだろうか、そう考えた時に思ったのは、このやりがいというものの一端は「想像(創造)力」に起因するのでは、というコトだ。

僕はこの仕事を通して、それが自分の幸せ、ひいては他人の幸せにつながっていくような想像を描くことができず、それが創造の欠如を呈した。それは僕個人の問題である訳だが、そんな「ソウゾウ」が働かない仕事というのは得てして「やりがい」が少ないように思った。

ソウゾウ力を喚起する仕事、自分にとってのやりがいの指針の1つは、已然漠然としているがそんなものである気がしているし、逆に言えばソウゾウに足る仕事はどれだけ外側から詰らないモノに見えたとしても、至福の可能性を秘めているのではないか、と思う。



長くなったが、以上が僕のリゾートバイト・レポートだ。


2 件のコメント:

  1. ためになりました 自分がまるで体験してきたかのような気分になりました 

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  2. 良い体験談でした、私も少し違いますが、下記のように旅行しながらやってみようと思います。
    http://resort-baito.net/?p=684

    返信削除

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