2012年4月26日木曜日

シナイ山~7時間前の日本からの贈り物~


シナイ山は、シナイ半島にある、モーセが神から十戒を授かったとされる場所。ホレブ山 とも呼ばれる。


聖書のシナイ山の正確な場所は定かではないが、アラブ人がジェベル・ムーサー(アラビア語で「モーセ山」の意)と呼ぶシナイ半島南部の山(標高2,285 m)に古くから比定され、アブラハムの宗教によって神聖視されている。

ジェベル・ムーサーにはモーセに関わる伝承を持つ泉や岩が数多く存在し、土地の人々の信仰の対象となっている。3世紀には聖カタリナ修道院が建設された。


(wikipediaより抜粋)



カイロに到着した2日後、僕はシナイ半島にあるリゾート地・ダハブにやってきた。

ここでの滞在(俗に【沈没】とも言う)は出国前からの決定事項で、旅人の先輩方にオススメされたDeepBlueという日本人宿に、かれこれもう一週間弱宿泊している。

そんなリゾートが似合う男・井口あきらのダハブデイズについては追々記していくとして、今日はリアルタイムの出来事を綴ろうと思う。



僕が3~6歳のころ、小学校教師である父の仕事の都合で家族でエジプトのカイロに住んでいたのだが、その当時、毎年初日の出を拝むために、モーゼが十戒を授かったとされるシナイ山を登っていた。

その頃のアルバムを見たり、断片的にだが微かに記憶も残っていて、ここダハブからツアーで1000円程度で行ける、ということで、今回懐かしのシナイ山に登ってみることにした。

昨今シナイ半島の情勢は不安定らしく、事実韓国人旅行者が数ヶ月前に拉致されたということもあって多少ビビりながらも、ツアーのバスに乗り込んだのが24日深夜。

昼寝もロクにせずほぼ完徹状態で、1時間半ほどのドライブ。途中何度か自動小銃を肩にぶら下げた警官による検問があった。何故か僕はパスポートチェックされず。意味ないじゃんw

ツアーは僕を含めて10人程度の小規模なものだったが、他の団体も多く、割と賑やか。



2:00amには麓の町を出発。岩っぽい真っ暗な道を列をなして進む。時々ベドウィンのラクダとすれ違う。すれ違いざまにウンコ落としてくラクダ。ラクダに乗って天体観測しながら登ることもできるらしいが、100ポンド(1ポンド約15円)かかるらしくやめた。

空を見上げると、驚くほど満天の星空。天の川がはっきり見える。「こんなに星あったんだww」ってほど星が多い。今まで見た星空と比べ物にならない。スケールがデカ過ぎる。大地に寝転がって星空眺めて、そのまま死んでくのも悪くないな、なんて思うくらいだった。眠気は2秒で吹き飛んだ。

星を見上げながら歩いていると、段差に躓きそうになる。勿体無いと思いながらも、仕方なく足元を見ながら淡々と足を動かす。団体行動じゃなかったらあのまま麓で一晩明かしていたかもしれない。久しぶりに靴を履いたせいか爪先が痛む。ラクダに乗って流れ星数えるのもアリだったなあ、と少し後悔。

DeepBlueで一緒のアスカさんとミキトくん

大人3人分くらいの幅の道が、暗闇の中さらに黒いシルエットの山々の峰を緩やかに蛇行していて、20分に一度くらい途中の小さい店で休憩をとった。登山ってよりハイキングな感じ。一人だったらもっと早く登れるのになーなんて思いながらすれ違うラクダを眺める。シルエットがかっこいい、ラクダ。

最初のうちはそこそこ会話もあったけれど、中盤からは皆無心で登る。僕もiPodに耳を傾ける。ヘビーリストはYUKIの星屑サンセット。YUKIかわいい。





登り始めて2時間くらいで最後の休憩場所に辿り着いたのだが、遠くの空が少し明るくなり始めてる。「このペースでちんたら歩いてちゃご来光見逃すかもしれないぞ」、とちょっと焦ってツアーの他の人らより先に進む。



だ が こ こ か ら が 地 獄 だ っ た 。





周りの雰囲気的に「もう頂上なのかな」と思っていた先に待ち受けていたのは、そこまでの比較的緩やかな道とは打って変わって、永遠に続く岩の階段だった・・・(後から聞いた話、2500段あったらしい)。

急げ急げと最初のうちは2段飛ばしで小走りで登っていたが、徐々に心が折れ始める。と同時に膝が笑い始める。CoCo壱の十辛完食したときの20倍、中学の部活でバスケ部が休みの日に体育館まるまる使った真夏日の剣道の4倍くらいキツい。



息を切らしながら駆け抜けてきた道を振り返ると、空はもうずいぶんと明るくなってきている。それまで漆黒のシルエットでしかなかった岩肌が露になり始めた。思ったよりもゴツゴツしてる。

最後の100段くらいは膝に手を当て、「モーゼの野郎、こんなとこに登りやがってクソ」と的外れな悪態づきながら進む。僕が3歳だった頃、親父は僕を背負って登っていたと聞いたが、ちょっとマジで尊敬した。

そしてようやく5時前にはエジプト最高峰の一角、2285m地点に登頂した。風が強く汗が一瞬で乾き、凍えるほど寒い。朝日はまだ顔を出しておらず、既に登頂した人々は持参した寝袋に包まり眠そうな顔をしている。

モロッコで買った青い布を体に巻きつけ、自作のおにぎりをほお張りながら一眼を手にとる。シャッターを押す指先が悴む。






夜明けはゆっくり、静かだった。東の空が幻想的なグラデーションで染められ、西の山々は赤く輝き始める。前に座っていた4人のフランス人が賛美歌のような歌を口ずさみ始め、その綺麗な響きと御来光が見事にマッチして、夢見心地で朝焼けを見続けた。ナイスBGM。

7時間前の日本からの贈り物。

神様がホントにいるのか分からないけど、ここでモーゼに十戒授けるとかなかなか洒落たことするなー、なんて思ってた。



太陽がすっかり昇り、力強く世界を照らし始める。日差しがあるだけで随分暖かい。頂上にある教会では、賛美歌歌ったり祈ったりしてる人もいた。



17年前、ここに登った記憶の断片と一致する風景を探したが見当たらなかった。人間の記憶なんてそんなもんなんだな、きっと。

都合良く形が変わっちゃう過去に囚われすぎたり、ホントに来るかも分からない未来に焦がれすぎたり、そんなのよりも、「今、ここに、自分がいる」ってことの尊さ。



「今を生きる」なんて有り触れた言葉の尊さを知り、有り触れていたのは自分の感性だと知る。



その後、登ったときの半分くらいの時間をかけて下山したのだけれども、これがまたキツかった。暑い。膝がカクカクする。


麓のカフェに戻ったあと、ツアーの一環なのか教会に連れて行かれたのだが、これがまたつまらなかった。人が多いし、何より眠い。教会は静かで荘厳とした感じのほうが好きだわ。

全部のツアー批判するわけじゃないけど、自分には合わないなーってつくづく感じた。

ゆっくりしたくても全体に合わせなきゃいけないし、興味なくても着いてかなくちゃいけないし。何より楽すぎる。トラブルを楽しむ以前に、トラブルすら起こらない。自分のペースで、自分のフィーリングで、って方が性に合うな、と。再実感。

でも最近団体行動が多いおかげで気づいたことがある。自分にはやっぱり一人の時間が必要。音楽聴きながらボーっとしたり、ダラーっと本読んだり、そういう時間でバランスとらないと疲れがすぐ溜まる。けど綺麗な景色とか遺跡とかは誰かと一緒に観たい。要はワガママなんだな、と。



と、なんだかまとまりの無い感じになってしまいましたが、シナイ山、オススメです。

最後に付け加えるなら、僕の見た感じ、登山者の8割がカップルでした。

ガイドのエジプト人と「うらやましーなークソ」とか悪態づきながらヨーロッパ人カップルがいちゃいちゃ写真撮ってるのを見てました。

皆さんも気をつけてください!


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2 件のコメント:

  1. 素敵!
    その一言に尽きますね。
    写真も文章もあきらがした経験も!
    うらやましくなります!その大胆さとタフさ(*^^*)

    体にきをつけて★

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  2. >>美紀

    ありがとー!このコメントもらった日から早速入院しちゃってますが、粘り強く旅続けまーす!

    返信削除

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