”異変”を感じたのはダイビング講習3日目のこと。3mほど潜行すると頭の中を縛られてるような痛みを感じた。
前日の夜ドミトリーにあまりに蚊が多くて外で寝たからか、睡眠不足と少し風邪っぽいような節はあったのでそれを疑った。
宿に戻りオープンウォーターのテストの後、体温を測ってみる。
「38.6℃」。
予想外の高熱に驚いた。たかだか一晩風にさらされたくらいでこんなに高熱が出たことがショックで、翌日から始まるはずだったアドバンスコースを延期してもらい、一日しっかり休むことに。
大抵、こういう突発的な熱は翌日冷めるもの。そう期待して目を閉じたのだが、翌朝、体温は前日とさほど変わりない。
結局、薬を飲み、もう一日様子を見ることにした。症状は熱と下痢と鼻水のみ。頭痛も吐き気も倦怠感も関節痛も悪寒もナシ。
熱があると気づかなければ普通に活動できるくらいで、逆にそれが嫌な感じ。熱が高くなったり低くなったりを繰り返しのも気に食わない。
食欲もそれなりにあったので、栄養価高そうなものを選んで意識的に食べ、水分もマメにしっかり補給した。
このとき熱は36.4℃。「これで完璧だろう!?」、そう思いながら暖かくしてベッドに横たわる。
翌朝、熱は39.4℃まで上がっていた。
ダイビングが再開できない・周りに迷惑をかけていることよりも、ゆる~く生活してるだけのダハブでこれほど高熱が出たのがショックだった。
前日夜から水様性の下痢も始まり、風邪以外の何かの可能性を考え始める。西ナイル熱、マラリア、赤痢・・・最悪の病の名が頭に浮かぶ。
薬の効果も感じられず、熱の下がる気配も無かったので、ダハブの病院に行くことにした。
宿からタクシーで5分ほどに位置するDahabSpecializedHospitalは、新築なのか中も外もキレイ。受付へ診察願いに行くと、開口一番「保険に入っているか?」と聞かれる。
iPodで保険契約証のデータを受付のPCに送り、少々冷房が効き過ぎている待合室で待つこと15分、青いケーシー白衣を着た看護婦さんに診察室に呼ばれる。
ベッドに仰向けになり、エジプト人医師による病状聴取&触診。熱が高いことよりも下痢に注目しているようだった。
iPodで撮ったから画質が悪い・・・ |
その後、病室に案内された。薬を処方してもらって帰るつもりで来ていたのだが、どうやら検査入院する必要があるらしい。
予想外の展開に戸惑っていると、イスラム圏特有のスカーフを頭に巻いた看護婦さんが手馴れた様子で点滴の準備を始めた。人生初点滴がまさかダハブになるとは。手の甲に管を刺され、毎回チューブをぐりぐりされた。痛い。
看護婦さんの素手に僕の血がついてるけど気にしてなかった。日本じゃあり得ないなー。
病室は個室で、コーラやジュースが一杯入った冷蔵庫、紙つきの洋式トイレ、英語の世界ニュースが入るテレビ、無料のwi-fi、染みひとつない白い壁、と、ほんとにVIPのような待遇。「宿に一瞬戻ってPCをとってきたい」と言うと立派な車を呼んでくれた。
病院の食事。これは昼食。夕食と朝食はパン2切れとジャムのみ。 |
翌朝、検査の結果を聞くも担当医になかなか会わせてもらえず。
保険金の申請書類の記入、保険会社のロンドン支部に電話をし状況を説明。どうやら宿からの運賃すら含めた保険金が降りるようで一安心。
熱は少し収まったが下痢は相変わらずで、15分に一回トイレに駆け込んでいた。ほとんど水のような便で、少し紫っぽい。
午前の点滴を終えると、「水をできるだけ飲んでトイレに行きたくなったら教えろ」と指示される。すると、腹部エコーの検査室へ連れて行かれた。腹に塗りたくるジェルが気持ち悪い。妊婦さんの気分。
深刻な表情で、病気の苦しさを訴える僕。鼻の部分が欧米人サイズだった。 |
担当医に会えたのはその日の午後。
---『サルモネラ』による胃腸炎---
聞き取りづらいアラビア英語でそう告げられた。
一時は赤痢まで覚悟していただけにほっと胸を撫で下ろす、と同時に何処でサルモネラ菌なんてもらってきたのか不思議でならない。
病名も分かったし退院したい、と申し出たところ、「下痢が治るまで病院から出ちゃ駄目」、とのこと。サルモネラの中でもエグいタイプのやつだったらしく、プチ隔離された。
その後も淡々と治療を受け続けたが、空き時間は暇で暇で、道中で出会った旅行者から頂いた映画や漫画を見続けた。病室から海が遠くに見えるのが虚しかった。
退院したのはその翌日。結局2泊3日の検査入院だった。病院を出るとき、検査結果(消化器系全臓器の検査結果)やレントゲンをもらった。
以上ナシ! |
◆
今回サルモネラを患い身にしみたのは、周りの人々の暖かさ。迷惑かけまくったが、DeepBlueやSevenHeaven、日本の友人、色んな方が心配して下さった。
一人暮らし始めて初めて風邪ひいたときも思ったけど、病気のとき一人ってほんとに辛い。(そして日本食が食べたくなる。)
今回はダハブだったから、設備の整った病院も、心配してくれる日本人もいたけど、ここから先の旅路ではそうもいかない。
マラリアや赤痢、髄膜炎やデング熱、エボラ出血熱やその他多種多様な悪魔のような病気・・・気をつけてもどうにもならないものも多いが、油断だけはしないようにしたい。
◆
それとお金ってすごいな、ってのを感じた。保険金請求書類何枚か書いて、ロンドンの支部に電話一本いれただけで、入院費用全額払ってくれるんだもん。(まあ保険加入してるから当たり前なんだけども)
でもそれってお金あるからできるんだよなあ、とほんと思う。
タクシーのるときに「どっちの病院に行く?」って聞かれた。
特に何も考えず、どうせ保険金下りるし、ってことで「良いほうの病院!」って頼んだけど、きっとそのもうひとつのほうの病院にだって行けない地元の人はいっぱいいる。
ダハブ中心部でだらだら過ごしていると世界がそこで完結してしまうが、ダハブのエジプシャンはちょっと特別だと思う実際。皆お金もってるし、僕よりよっぽどいい服着てるし。
けど、5分も車を走らせると、そこには観光収入にすらありつけていない、質素な土壁と小汚い服(というより布)を纏った家族が住んでいたりする。
彼らはきっと僕の入院したdahab specialized hospitalには一生いけないだろう。それがいいとか悪いとか、そういうのが言いたいんじゃなくて、格差は見えにくくてもどこかにあるんだ、っていうこと。
極端かもしれないけど、自分の命は誰かの命の犠牲の上に成り立っているんだ、ってこと。
考えさせられることは多い。
長くなったけど、そんな入院経験でした。
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良い経験したみたいだけど、水には気を付けましょう!海のものでも危ないのだよ!
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