2012年5月20日日曜日

とあるカイロの安宿にて。


バックパッカーには所謂「貧乏旅行」スタイルを基本とする旅人が多い。彼らはその訪れる街々にある安宿を探し出し、時には数十円と宿の設備を天秤にかける。

そんな世界各地の安宿の中に、「日本人宿」と称されるゲストハウスが存在する。

日本人バックパッカーが多く集まるそれらの宿には、日本語の漫画や本、ガイドブックが置いてあったり、「シェア飯」ができるようキッチンが開放されていたりと、「沈没者」と呼ばれる長期滞在者を生み出すことが度々あるほどに居心地が良いことが多い。

「海外に出てまで日本人と交わりたくない」と、人によっては立ち寄らないこともあるが、僕個人は「旅先での日本人との出会いも楽しみたい」、という思いもあって、日本人宿があれば訪れるようにしている。



そんな僕は今、エジプトの首都カイロにある有名日本人宿「safari」に滞在している。

様々な露天が飛び出すように並ぶ細い路地に面した、古い6階建てのビル。

もう何十年もひしゃげた姿を晒しているのであろう壊れたエレベーターは、まるで忘れ去られた鳥篭のような様相を呈している。仮に動いていても絶対に乗りたくないようなそれを横目に、螺旋状の階段を登りきった最上階、そこにsafariは位置する。

息を切らしながら扉を開くと、そこはおよそ500冊の日本の本や漫画がロビーに並んだ、「小さな日本」。一泊20エジプトポンド(約300円)、wifiあり、ホットシャワー。お世辞にも綺麗とは言えないが、妙な居心地の良さといい具合に淀んだ空気が魅力的だ。

一昔前は満室の続く黄金期もあったらしいが、「アラブの春」以降のエジプトの情勢不安もあってか、今現在の宿泊者は僕を含めて5人。静かで極めて退廃的な空気に包まれている。


そんなsafariの魅力のひとつであるのは「情報ノート」と呼ばれる、旅人の情報交換ノート。 

アフリカとアジア・欧州を繋ぐ交差点であるカイロ。手垢や汗でぼろぼろになり、長い年月を経て変色してしまっているそれらを求めて、今でも旅人は集まってくる。

どれだけインターネットが普及し、個々が情報を発信できる時代となった現代でも、ガイドブックにはないローカルでホットな情報は旅において欠かせない。

そんなsafariの情報ノートを手にとってみると、驚くことに古い書き込みだと84年のものまである。

ピラミッドに登頂(「盗頂」と書くべきか)した記録とそのノウハウ、safari麻雀大会のトーナメント表、宿情報や飯屋情報に加え雑多のジャンルのページがセロテープで固定されながらもしっかりと保管されている。

そんな先人たちの偉大なる遺産である書き込みの中に、いくつか興味深いテーマについて論じ考察したものを発見したので、ここでいくつか紹介させて頂こうと思う。





『日本人大移動計画案(原案)』

1.要旨 
カイロにおける日本人の溜り場を現在のサファリホテルから他の任意の場所へ移動させようとするもの。

2.理由
サファリホテルを日本人の溜り場とすることを定めた現行の「小林体制」に対し、地上6Fという立地条件の不便さや、近年特に増加しつつある当ホテル内での盗難等の犯罪に対する経営者側の管理不足を理由にして、一部の民衆が起こした反小林体制運動、とりわけ1994年6月15日の暴動(サファリの変)にその端を発する。

3.期日
具体的な期日こそ未定ながら、いち早い計画の実現が期待される。

4.候補地
候補地として考えられる場所にはいくつかの条件がある。
・モガンマアを中心とする半径500m以内に位置していること。
・家賃は一日7ポンドを上限とすること。
・それが建物の一部である場合は、少なくとも地上3F以下、それ以上の場合はエレベーター付であること。
・収容人数は少なくとも15名以上であること。またそれに相応しい収容面積が確保されてあること。
・ホテル内のセキュリティーが具体的に明示されていること。

5.問題点
最大の問題点とは、言うまでもなく現在の体制を築き上げ、現在に至るまでそれを支え続けている小林さんの存在であろう。この計画の成否さえ彼の一存にかかっていると言っても過言ではない。仮に小林さん抜きで本計画の実現が有り得たとしても、それは恒久的なものとなりえない可能性が大きい。したがって我々は小林さんを何とかして翼下に納める必要がある。これまでも小林さんとの交渉は幾度となく行われてきたが、彼の現体制への執着は思いの他強く、未だ満足な結果を得るまでには至っていない。一向に成果の上がらない小林さん懐柔策に業を煮やした一部の参加者が、小林さんの暗殺に走るケースもあったが、本願成就のためとはいえ、殺生は我々の本意では決して無い。辛抱強い交渉が続けられるべきであろう。





『バックパッカー三箇条(基本)』
一、人前でSEXはしない。
二、やる前にシャワーを浴びる。
三、やった後にもシャワーを忘れない。

皆さん、道徳を守って人の道を外さないで良い旅をしてください。1994.10.9 員会






『質問です。愛のあるSEXとはどんなSEXですか?(愛の戦士1号)』

「カーステがついている車」ぐらいの意味でしょう。つまり「カーステ」と「車」が別なように、愛とSEXは別です。ただカーステがあると便利なように、愛があるとイイだけです。





『過去最高の口説き文句』
・「俺の為に生まれてきたんやろ!」
・女「私、0時をまわると人格が変わるの」→男「じゃあ、もう一人の君と会ってみたいな」
・「この気持ち、言葉になんかできないよ。態度で示させてくれ。」
・「頼む!1回でええから!半分だけ!動かさへんし!」
・「君の下半身が好きだ」

『別れるときの言葉』
・「お前のことは好きやけど、一度も「愛してる」と言ったことはない」
・「俺のほうから電話するよ」





Q.コップに水をそそいでいくと丸~く膨れるが、そのことを”表面張力”と呼ぶのは余りにも大袈裟なのではなかろうか?また英語で”surface tension”と呼ぶのには余りにもカッコ良過ぎるのではなかろうか---そこでこの現象を何と呼んだらいいか募集中です。
A.「ポヨヨン」





『譲り合うのがいいと日本人が考えることは自由である。しかし、この地球上の恐らく大多数の人間は譲り合うことなど、いささかの意義も認めていないということも、はっきりと確認すべきなのである。』





『サファリ駄目人間の法則~あなたもこれで駄目人間~(☆は2ポイント)』
・明日の予定を決めていない。
・今日の予定すら決めていない。
・というか、多分今日は何もやらない。
・一歩も外に出ない日がある。
・ラーメンを買い置きしている。
・タバコは売るほどもっている。
・ここ最近、日本語以外聞いてないような...
☆光に弱い。
・「二時」というと「午前二時」を思い浮かべる。
・明日できることは明日やる主義。
・サファリの滞在期間が一週間を超えた。
☆雀狂である。
☆ぼーん、しゅぽーん
・「たまにはこんなダラけた生活もいいかな」と自分を正当化。
・「観光」したことを人に自慢したくなる。
・...誰かがやってくれるだろう。
・行動範囲が極めて狭い。
・実はこの生活が気に入っている。
・やっぱ、ルクソールくらい行ったほうがいいのかなあ。
・オールドカイロとイスラミックカイロの区別がつかない。
・他人のベッドに無意識のうちに座っている。
・自分のベッドを忘れた。
☆気がつくと一週間以上同じ服。
☆「今日3回も下に下りたんだぜ!」とか、外に出たことを自慢する。
・真性無精ひげ。
・今日は何月?
☆午後6時以降に朝食をとった経験がある。
☆「今日何処いった?」と周りに聞いて「行ってないよ」という返事がくると安心する。
・移動する意思が消えかかっている。
・バックパックに埃がたまっている。
☆「駄目人間」と言われても腹がたたない。
・いつシャワーを浴びたか覚えていない。

10項目以下
→あなたはマトモですね。ちょっとマトモすぎますよ。サファリにいて居心地悪くないですか?いや、これは悪い意味じゃなくて。手遅れになる前nスルタンへの移籍をお勧めします。

10~20
→危うい兆候ですね。あなた、まだまだ自分では「俺は駄目人間なんかじゃないぜ」とか思ってるでしょう?でもね・・・いや、その意思を持ち続けてがんばってください。敬具。

20~30
→おめでとうございます。あなたもようやく駄目人間の仲間入りを達成されました。これからもより高次元の駄目人間への変身を目指してダラダラしてください。

30~40
→常連駄目人間。外見レヴェルでその駄目人間ぶりが判断可能。

40~
→駄目人間完成型。筆者の理解範囲を超えているので詳細は不明。








役に立つ世界各国の情報の数々の間に記された年代モノの落書きたち。

カイロにお越しの際は、是非safariへ。笑

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22日にアスワンへ向かう予定です。あくまでも予定です。

1 件のコメント:

  1. 1999.01.22
    ダメ人間の法則に書き込んだ一人です^^
    当時の日記を読み返し、検索してみたらヒットしました。

    もう20年も前なんだなぁ。
    そう言えば小林さんっていたなぁ。

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